QOL向上のために歯科医療にできること:MI21.net

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プライマリーヘルスケアの担い手としての歯科

プライマリーヘルスケア(primary health care)とは、1978年にWHOが発表した考え方で「2000 年までにすべての人に健康を」(40ページ参照)との目標を受け従来のプライマリーケア(疾病の初期治療、第1次医療)に加えて健康診断・予防接種などの保健サービスを含む総合的な対応のことをいいます。
歯科医院での取り組みとしては定期健診はもちろん、初診時や診断のための各種検査において多方面からの情報収集を行ない、リスクファクターを顕在化させさらには通常時の状態の把握を行なうことによりその変化を見極めていくことが適切な対応に必要であると考えられます。

また歯科においても従来から口腔の定期健診、フッ化物塗布などの予防処置が行なわれてきましたがより専門的に、そして口腔だけでなく全身疾患の予防・改善、初期症状の発見など口腔を含めた全身の健康の担い手として歯科医院が機能し必要があれば医科の総合病院、一般開業医等への紹介を行うという健康管理の拠点として積極的にかかわっていくことが歯科医院の可能性として期待されています。

問診・各種検査にて収集されるデータ
  • ■問診
  • 食習慣  
  • (砂糖摂取、飲食回数、飲食内容など)
  • 生活習慣
  • (ストレス、忙しさ、経済性、夫婦関係、家庭環境、家族の健康、スポーツ習慣など)
  • 口腔衛生の習慣
  • (ブラッシングの回数・方法、フッ化物の使用状況など)
  • 家族歴
  • (口腔疾患の既往歴、全身疾患の既往歴など)
  • 喫煙  
  • (喫煙習慣の有無、喫煙歴、本数など)
  • 服薬
  • (種類、頻度など)
  • ■血圧測定
  • ■血液検査
  • ■唾液検査
  • 細菌検査、性状検査、遊離ヘモグロビン、乳酸脱水素酵素など

予防の段階と検査目的

段 階 検査目的
第1 次予防
健康増進・特異的予防
モチベーションのための検査
(主として生化学検査)
第2 次予防
早期発見・即時処置
障害の進行阻止
スクリーニング・診断のための検査
(生化学検査および細菌検査)
第3 次予防
機能回復
モニタリングのための検査
(主として細菌検査)
予防の段階の第1次予防で用いる検査は、検査の目的が健康行動の動機づけ(モチベーション)なので、安価で陽性を陽性と判断する感度が高ければ良いのですが、第2次予防で行なわれる診療室レベルでの検査で特異度の低い検査を用いると健康な人を患者にする結果を招く恐れがあるので、公衆衛生的な検査と診療室の検査は明確に分けて考えることが望ましいでしょう。
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WHOステップワイズアプローチ

WHOステップワイズアプローチ 診療の場ではなく、公衆衛生の場ではスクリーニングにおいて生化学検査は必要ではないと言われますが、WHOでは、慢性疾患のリスクファクターをサーベイランス(調査監視)する方法をステップワイズアプローチとしてまとめ、推奨しています。
質問紙による問診(Questionnaires)、触診や視診等による形態的検査(Physical measurements)、唾液検査などの生化学検査(Biochemical measurements)の3段階から構成されています。サーベイランスは、モニタリング(継続監視)とほぼ同じ意味で用いられますが、継続的な調査により変化を見逃さないように継続監視することに対し、サーベイランスは悪い部分を見逃さないように調査監視することを表わします。

※花田信弘, 鴨井久一:唾液検査の使い方と基準値:鴨井久一, 花田信弘, 佐藤勉, 野村義明編:Priventive Periodontology;361-364, 医歯薬出版, 東京,2007

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